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俺は二ノ宮仁。じんではなくひとしだ。俺も学校のワイシャツにベスト、スラックスと言う制服のままだが、こちらはズボンに緑色の線が入っている。森に隠れるにはうってつけだろう。俺の容姿?普通だ。可もなく不可もなく。顔のせいで彼女ができないということは無いだろうと思っている。などと、脳内で全員の紹介をしてみていると、優姫が焦れったそうに俺に話しかけてきた。
「ちょっと、仁!聞いてるー?」
「ん?ああ、すまん、じゃあ、あれ、落とすからうまく取れよ?」
「まっかせて!」
優姫が俺に向かってビシッと敬礼する。姿勢がいいので敬礼がとてもかっこいい。
俺はポケットから普通の文庫本より少し小さいサイズの本を取り出して、ページをめくる。
「相変わらず、この文字は読めないな。読めないけど分かる。不思議なもんだ」
「早く!」
「はいはい」
俺は左手で目的のページを開いたままの本を持ち、右手を銃の形にして木の高い位置に生っている果物に狙いを定める。本が輝き始め、俺は右手にあの感覚が集まるのを感じる。あの感覚。いや、これは経験しないとよく分からない感覚だろう。なんとなくチリチリするような、ふわふわするような、それでいて、気持ちいいような、気持ち悪いような、水の中にいるような。そんな感覚だ。
「行くぞ、水鉄砲(ウォーターショット)!」
俺の右手の人差し指から水の弾が勢い良く飛び出す。水の弾は実と木を繋ぐ部分に命中した。おお、俺の腕もなかなかじゃないか。だが、落ちてくる実を見た優姫はヒラリと身をかわした。
「うわぁ!」優姫の悲鳴。
ズドォォン!
落ちてきた実は、俺たちの想像をはるかに上回り、スイカと勝負しても絶対に負けないだろうと確信させられるほどの大きさだった。
「優姫、お前取るって言ったよな?」
「めちゃくちゃ、でかいんだもん!女子にこんなもの取らせる気?」
「どこに女子がいるんだ?」
「ムキー!」
いがみ合いが始まる前に涼香が間に入る。涼香も慣れたものだな。
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