第1章 ドラゴンの食事

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 ないがしろにされた優姫は唇を尖らせて、刀の手入れを始めてしまった。涼香は嬉しそうに両手を合わせる。 「現状わかってるのは、この本が魔法を発動させるために必要ってことですね」 「ああ、そうだな。そして、俺の本は青、涼香の本は白。これは使える魔法のイメージ色って感じかな」 「そうですね、仁さんは水魔法系で青、私は治癒系ですかね?白い魔道書です」  俺はもっともらしくウンウンと頷くと優姫の方を向いた。 「優姫、お前のは何色だ?」 「ボク?ボクのは赤だよ?」 「それで使えるのは、なんの魔法だっけ?」 「ん?どういう魔法なのか?ボクにはよくわからないなぁ」 「ふむ、じゃあ使ってみてくれ」 「やだよー」 「なぜに」 「仁に見せるのなんてもったいないもん」 「なんでだよ・・・」  俺、何か嫌われることでもしただろうか?そこですっと涼香を見る。涼香は心得たとばかりに俺を援護する。 「でも、赤からイメージするのは、火や炎、マグマといったものでしょうか」 「火かー。多分違うなー」 「違いますか。優姫さん、私もみてみたいです。やってみてくださいな」  優姫は腰に手を当てていかにも悩んでいるアピールをする。 「しょうがないな、涼香ちゃんには特別だぞ?!おい、仁。ありがたく思え」  ビシッと俺を指さしてくる。 「ははー」  俺は心のこもらない礼を優姫に送る。だが、優姫はそれで満足したようだ。ふふん。さっさと魔法を使いやがれ。優姫はいそいそとスカートのポケットから赤い魔道書を取り出すと最初のページを開く。魔道書に少しばかり光が灯った段階で優姫は唱えた。 「力強化(パワーアップ)」  すうっと優姫の腕がほのかに赤い光に包まれた。 「これで、何が起きるんだ?」  俺がそう聞くと優姫はとびきりの笑顔を浮かべて、さっき食べた実がなっている木の幹へ歩き出した。幹の下についた優姫は相撲取りのように両手を木の幹につくと、右手をすっと引いた。  ズドォン!  太く重量感のある木の幹が優姫の一撃に大きく揺れた。次の瞬間、俺や涼香の頭上には、なっていた実がいくつか落ちてきた。幸い涼香の真上には降ってこなかったらしい。俺は、ダメだった。 「ぐはぁ!」 「仁ー!いいねー!」  優姫の叫び声が聞こえる。覚えてやがれ・・・この野郎。
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