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禍々しい暗黒色の鎧に身を包んだ存在が、ぼくらの前に立ちはだかった。
この世の悪を統べる者、魔王だ。その名に相応しく。全身からは赤黒い妖気が煙るように放たれている。
体躯は並の人間の倍はあろうか。その様子はむしろそびえ立つという表現が相応しい。
そんな魔物の中の魔物。恐怖の頂点に立つ魔王が今、片膝を地面についた。
えぐられた胸の傷を手で押さえ、恨めしくぼくたちを睨んでいる。
さりとてこちらも無傷ではない。
生きるか死ぬかの戦いだった。
しかし強大な力を誇る魔王でさえ、ウィング━━すなわちぼくと、その仲間━━ドラグを名乗る友人の最強コンビには敵わないのだ。
ぼくは剣を構え、相棒ドラグに目配せをした。
光り輝く双剣の柄を握りしめる。
刀身の輝きはさらに増し始めた。
「ドラグ、一気に畳み掛けるぞ!」
「おうよ!」ドラグが威勢良く応えた。「タイミングはそっちに任せるぜ!」
呼吸を合わせ、最終奥義を発動する。
「「エターナル・ディスティニー!」」
重なる掛け声が魔王城の一室に響き渡った直後、最大の敵は断末魔の叫びを上げた。
「ぬわ━━っ」
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