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※
「……うん。お疲れ。じゃあ、また明日学校で。……わかってるって。明日こそ忘れないよ。ちゃんと持って帰るってば」
画面の向こうにいる友人とのボイスチャットで別れを告げた後、ゲームからログアウトをした。
ヘッドマウントディスプレイを頭から取り外す。
暗転した画面には、いつも通りの冴えない顔をした少年が映り込んでいた。
「はぁ……」
魔王を滅し、世界を救った英雄はどこへ行ったのやら。
一気に現実に引き戻される気がした。
世界に誇る大ゲームブランド、SAMY社が満を持して発売した次世代VRゲーム機は数多くのプレイヤー達を熱狂させた。そのことに異論はない。
でも、それはそれ。
どんなにレベルを上げたところで女の子にモテモテになるわけじゃない。
試験の成績が上がるわけでもない。
現実の問題は山積みのままだ。
万事上手くいかない現実のことを考えてしまうと、ゲーム中であっても浮かない顔をしてしまうのは仕方のないことだ。友人には悪いけど、お互いに気を使わなくていいからこそ友人なわけで。
「せめて稀代の天才開発者が現れて、プレイヤーたちをゲームの世界に閉じ込めてくれないものか」
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