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ちっと舌打ちして、ぼくは布団に寝転がった。
「そろそろ明日の宿題やらないとな」
なんて呟きながら、目前の問題から気を逸らしていると、コンコンと部屋の扉がノックされた。
「ツバサッ。起きてる??」
事もあろうにその声は、今この世で一番聞きたくないもの。母親という諸悪の根源の声だった。
ベッド上でぼくは身構え、息を潜めた。
「ねえ、ちょっと、聞いてるの?」
布団を頭までかぶってやり過ごしてやろう。そう目論み、咄嗟に布団を手繰り寄せようとする自分の手が空中で止まった。
というのも、母の声の調子がどうもおかしい。
怒っている様子ではない。
やけに緊迫した声。狼狽している声と言ってもいいかもしれない。
しかしそんなことは知ったこっちゃない。
今頃ぼくに謝りに来たって手遅れなんだ。
布団を首までかぶり、ぼくは「起きてるよ!」と扉に向かって怒鳴りつけた。
母はそれでもノックを繰り返した。
「良いから扉開けてちょうだい!」
「うるさいなっ。ほっといてよ!」
ぼくは布団を頭まですっぽりかぶった。
思春期の男の子━━と言えばそれまでだが、こんな態度に出るのも一応の理由がある。
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