第一章 ひとりぼっちの世界、そして

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 ………………  ………… 「一学期の成績は散々だったでしょ。夏もぐうたら過ごすだけで、二学期はどうするつもりなの? もう高校生なんだから進路のこともそうだし、ちゃんと自分の将来のこと考えてるの?」  多少ヒステリックな物言いとはいえ、その話自体は世の中に腐るほどよくあるものだ。母親は何も間違ったことを言っていないことはわかっていた。  でも、ぼくはカチンと来てしまった。 「こっちの苦労なんて何一つ分かってない癖に!」  そこから口喧嘩が勃発。  結局、夕飯も食べずにぼくは逃げるようにして自室に閉じこもるハメになったのだった。  …………  ………………  その母親が珍しく、慌ただしげに部屋の扉を叩いている。  精神的に追い込まれ、耐えきれなくなったぼくは、ついに爆発してしまった。 「うるさいな! どっか消えてしまえよ!」  ノック音がぴたりと止まる。  しばらく気まずい沈黙が続いた。 「……母さん?」  まさか本当に消えてしまったのだろうか。不安になって、こっそりと布団から頭を出す。  すると、諦観に満ちた母の声が扉越しに聞こえた。 「わかったわ」母親の声は消え入りそうなほど小さかった。
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