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ピピーッ!
「試合終了!」
その声がかかった瞬間、俺はコートに座り込んだ
回りから沸き上がる歓声、試合は勝利に終わった
「お疲れ、夏樹。」
「お疲れ様です…二条先輩…。」
「ヘロヘロだな。でも格好よかったぜ最後のスリーポイントシュート。」
「ありがとうございます…。」
俺は生粋のフォワードで、遠くから狙い打つなんて器用な真似は苦手だった
けれど、今回は俺の限界に挑戦してみたかった。今まで1人で練習するしかなかったことを実践してみたかった
結果は上々、俺にとっては十分だ
「唯香も喜んでくれるだろ。女子の方はどうなってるかは分かんないけど、自慢してやろうぜ。」
「藤井先輩にウザいって怒られても知りませんからね。」
違いねえなと先輩は笑う、やっぱり藤井先輩には悪いが、藤井先輩が言っていたことはどうにも俺には腑に落ちなかった
萎えた身体に鞭打って立ち上がり、観覧席を見回す。探し出すのはただ1人だ
やたらと女子の密度が高い一画を見つけて、ほとんど確証に近い憶測でそこを見つめる
狙いたがわず、その中心に東雲さんはいた
東雲さんは俺と目が合うと、その唇が動いた
『お・つ・か・れ・さ・ま』そう言い終わると、東雲さんは笑った
今までにないほど嬉しくて、けれど言葉では言い表せなくて、俺はせめてもの感情表現に思いっきり笑顔でブイサインを送った
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