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「えーっと…突然変なこと言ってごめんね。順を追って説明しようか。」
突然の『食料宣言』に思考が停止してしまった俺に慌てたのか、東雲さんはとりあえず自分の家に来てくれるか俺に聞いてきた
ほどなくして思考停止状態から回復した俺は、諸々の説明も兼ねて東雲さんの部屋にお邪魔することにしたのだ
「まずは僕たちの話からしようか。」
どうやら東雲さんは母国であるイギリスではとても名のある吸血鬼の一族の1人らしい
平凡な俺には今まで縁のなかった話だが、この世界には、東雲さんのような吸血鬼以外にも様々な『人ではないもの』がいるらしい
そんな人ではないもの専門の医療機関などもあるらしく、普通の病院などに隠れて併設されていることが多いのだそうだ
ここからは吸血鬼専門の話になるが、いくら吸血鬼といえど道端で人を襲ったらこのご時世、犯罪になるらしい
といっても法的拘束があるとかそういうのではなく、あくまでもの掟とか矜持とかそういうもので、破れば位の剥奪や種族からの破門を余儀なくされるのだそうだ
けれど人から奪えない、となるとどこかから提供されるしかない
ここで全ての吸血鬼が『医療機関から提供されるもので生きる』か『協力者を探す』かの二手に分かれる
人ではないものの医療機関はほとんど全国にあり、ここに頼っている限り、少なくとも飢えるということはない
代わりに、1度の量が少ないため、人間でいう空腹状態がいつも続くことになる
協力者を探せば、その人から定期的に血液をもらえて、かつ死なない程度であればお腹を満たすことも可能である
しかしその反面、協力者はおいそれと見つかるわけではなく、それ相応の労力がいる
「ってことなんだけどね…わかってもらえた?」
「ええまあ…。あの、東雲さんはいったい今までどうしていたんですか?」
「僕?僕は今までは医療機関に頼っていたよ、流石に誰かからもらうこともできなかったし。」
「そうなんですか…。」
「あ、よく史実とかにある『噛まれると本人も吸血鬼になる』っていうのは嘘だから、気にしなくていいよ。」
そう言われるが、いきなりのこと過ぎて頭がついていっていないのも事実だった
その様子を察したのか、東雲さんが椅子から立ち上がった
「突然こんな酷な話をしてしまってごめんね。今日はもう帰ろうか、僕が送っていくから。」
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