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ピンポーン…
『はい。』
「あの、暮橋です。」
『暮橋君?どうかしたの?』
「その…伝えたいことがあって…。」
『伝えたいこと?あー…今鍵開けに行くからその後でね。』
ドアを開けてもらい、室内に上がる
そのまま何度か見たことのあるダイニングに呼ばれる
「それで、伝えたいことって何かな?」
「その…東雲さんにこの前色んなこと話してもらったじゃないですか、人間以外のものとか、吸血鬼とか、東雲さん自身のこととか…。」
「うん、そうだね。」
「それで俺、考えたんです、家に帰って。」
「別に僕は無理強いする気はないからね、その上で君の判断を聞かせてくれる?」
「はい。俺…東雲さんの…食料になります!!」
シーン…
自分でも驚くほどの大声が出た
目の前に座る東雲さんも驚いた顔をしていた
(あれ…?俺もしかして、ものすごく恥ずかしいこと言った…?)
「………ぷっ。」
目の前で吹き出す音がしたかと思うと、東雲さんが肩を揺らしていた
次第にそれは大きくなり、しまいには声を出して笑い始めた
「ちょ…笑うとか失礼じゃないですか!俺、結構覚悟していったのに!」
「だって…ははっ…まさか、そんな、大真面目に言われるとは…っ。」
そうしている間にも東雲さんの笑いは止まらない
もう打つ手なしと判断した俺は、笑いが止まるまで放っておくことにした
しばらくして
「いやー笑った笑った。久々だよこんなに笑ったの。」
「そうですか、そりゃよかったデスネー。」
「そんなに怒らないでよ。ほら、機嫌直して。」
先ほどの大笑いの時の表情とは打って変わって困ったような笑みに、渋々ながらも東雲さんのほうを向く
「でも、本当にいいの?」
「いいんです、ちゃんと考えて決めたんで。後悔はしません。」
「そっか、君が納得したことに僕がケチをつけるのは野暮というものだね。じゃあ改めてよろしくね。」
俺の目の前に東雲さんの手が差し出される
その白い手に自分の手を重ね、ギュッと力を込めた
「はい、よろしくお願いします。」
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