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暖かい…
これは、夢…?
ふわふわしていて、浮いているみたいだ…
?…なんか眩しい――。
「…ん…。」
目を開けると、眩しい光が目に突き刺さった
とっさに手で目元を覆う
指の隙間から漏れる光に目を凝らすと細かなレースの模様が入った透明な布が見えた
揺れるそれをしばらく見ていたが、それがカーテンだとやっと気づく
(あれ…俺…いつの間に帰ってきたんだっけ?)
「気が付いた?」
「えっ…。」
唐突に隣から聞き覚えのない声がした
声のほうに目をやると、揺れる長い金髪が見えた
「あ、びっくりさせてごめんね。えっと…まずは名前を聞いていい?」
「あ…俺の名前は暮橋夏樹です、あの…俺…。」
「暮橋…あ、もしかして503号室の暮橋さん?」
「えっ…そうですけど…あの、なんで俺のことを…。」
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前は東雲玲(しののめ れい)、君と同じマンションの402号室に住んでます。よろしくね。」
「東雲……。あ、そういえば何か月か前にものすごくイケメンな人が引っ越してきたって話題になってたあの…!」
「そんなに話題になってたんだ、なんだか恥ずかしいな…。」
「いやもう近所中が一時期その話題で大盛り上がりでしたよ、うちの母の知り合いにアイドルみたいに追っかけてる人がいるって話ですし。」
「ここの人たちにはとても良くしてもらっているよ、夕飯のおかずとか余ったからって貰えるから正直大助かりだよ。」
東雲さんはくすくすと笑った
綺麗な青い瞳、名前は明らかに日本人なのにどう見たって容姿が日本人ではない
「ちょっと話がそれちゃったね、改めて聞くけど…君、昨日のこと覚えている?」
「昨日……。あっ!!」
バッと来ていたシャツをめくりあげる
刺されたと思われるわき腹には血が出ているわけでもなく、その代わり昨日の出来事が夢ではないという証のように、一筋の赤い傷跡ができていた
「俺…昨日誰かに刺されて…。」
「そう、君はこの先の路地で血まみれになって倒れていたんだ。僕も最初は殺人が起きたのかと思ってびっくりしたよ。」
「あの…怪しい人影見ませんでしたか…?全身黒づくめの。」
「僕は駅から歩いてきたけどそんな怪しい人見なかったな…。」
「そうですか…。」
俺が明らかに落胆したのを感じ取ったのか、東雲さんが向こうへ行く気配がした
「立てるのならおいで、お茶を入れるから。それからゆっくり話そうか。」
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