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キッチンから自分の分の夕食を運んできたアーニャが、ぷっと噴き出して笑いながら言った。
「二人ともすっかり仲良くなったのね」
思ってもいなかった言われように、僕は盛大に顔を顰める。
「誰がこんな奴と」
「それはこっちの台詞ってもんだ」
大きな口をへの字に曲げた鎧男の顔が何だか頭にきたので、僕はテーブルの下にある脛を盛大に蹴飛ばしてやった。
「いてぇ!」
「フン」
文句を言いたげな男を無視して、僕はナイフとフォークを手に取りチキンの胸肉を切り分け始める。奴も空腹には負けるのか、続いてパンを貪りだした。
アーニャはスープをスプーンで掬いながら、穏やかな顔で笑っている。
「……賑やかね」
僕とシドは、その声があんまりに優しいトーンだったので、何も言えずに彼女の顔を見つめた。
「こんなの何年ぶりかしら」
シドは少しだけ躊躇った素振りを見せてから、意を決したように口を開いた。
「――あんたの他のコトラの民は?」
アーニャが伺うように僕の瞳を見る。僕は口の中のチキンを飲み込んでから、淡々と答えた。
「皆死んだ。生き残りは僕一人だ」
シドがひゅっと息を呑む気配がしたが、僕は気に留めずにチキンの皮を綺麗に切り分けることに執着している。
「……悪いことを聞いた」
「よく意味がわからないな。僕はただの事実を述べただけだ」
シドがどうしてばつの悪い顔をしているのか、僕には全くもって理解できない。向けられた質問に対してありのままの事実を答える。僕がしたのは、そんな当たり前のことだ。
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