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「……不便だな」
何もかもが思い通りにならない生活というのは。
僕は椅子に腰かけたまま足を組んで、箒とちりとりを手に部屋へと戻ってくるアーニャを迎え入れる。
「別にわざわざ掃除なんぞしなくても、僕に頼めば一瞬で片付けてやらんでもないのに」
「あんたさっきと言ってることが真逆よ」
僕の魅力的な誘いを一蹴して、アーニャは少しだけ目を細めた。
「……コトラの力を無闇に使うのは感心しないわ」
アーニャの声は予想外に真剣だ。だけど僕はそのことに気付かないふりをしながら、両手を広げてふんぞりかえる。
「何故だ? この世の何もかもが僕の思い通りだっていうのに!」
「……あんたって本当に馬鹿ね」
アーニャはそう言ったきり黙ってしまった。
彼女が悲しそうな顔をしているのに気付かないふりをして、僕は今日もこの部屋でマシュマロを貪る。
十四歳の僕がここに引きこもり始めて十と四年。生まれてから死ぬまで僕の力が外の世界に影響を及ぼすことは無い。それは、コトラを継ぐ者が代々守り続けている掟だった。
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