第3章 招かれざる客人

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「……るさい……!」  唸るような声で、僕は吠えた。 「五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅いっ! 何も知らない癖に、たわ言ばかりほざくな!」  僕は目を瞑っていたが、それは決して泣きそうだったからではない。こんな輩を視界に入れて不愉快になるのが嫌だった。ただ、それだけなのだ。 「……今日のところはお引き取り下さい」  アーニャが有無を言わせぬ口調でそう言って、町人と鎧の男を玄関口まで追いやる。  なんやかんやと文句や罵り言葉を口にしながらも、この寒空の下に追い出されてしまったら為す術も無い。  そうやってはた迷惑な来訪者たちはすごすごと立ち去って行った。  このシドという男を除いて。 「俺は帰らん……帰らんぞ!」  男はドアの縁に必死でかじりつき、一人きりになっても尚抵抗している。 「……いい加減隙間風が寒いんですけど、出て行ってもらえます?」 「嫌だと言っている!」  シドはそう言って、アーニャの隙をついて屋敷の中に再び飛び込むと、僕の元まで凄まじいスピードで駆け寄ってきた。鎧が擦れる金属音がひどく耳障りだ。 「頼む!」  ガシャン、と一際大きな音がしたので視線をそちらにやった。僕はそのまま目を剥いて暫く動けない。これは恐らく、土下座というやつだ。  シドは床に手を付き、膝を付き、頭を垂れていた。 「非礼は詫びる! この町の人間が、あんたは人と会わないって言ってたから、こうするしか無いと思ったんだ。頼む! コトラの力で、成し遂げて欲しいことがある!」  頼む。頼む。  何度もそう言ってシドは額を地面に擦り付ける。アーニャが珍しく困った顔をして慌てていた。
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