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僕は少し考えて、口を開く。
「おい、男」
シドはおずおずと顔を上げて、僕の顔を見上げる。
「僕達コトラの民は、人の願いを聞かないことにしている。お前もさっさと帰った方がいい」
僕のすげない言葉に、シドは悲痛な叫びをあげた。
「そんな! 話だけでも!」
「聞く必要は無い」
そう言うと僕は今度こそ踵を返して、エントランスを後にする。
「アーニャ、そいつを追い出しておけ」
「リドル!」
アーニャが何かを言おうと口を開くが、それを邪魔するようにして僕は『絶対の効力』をもつその言葉を付け加えた。
「これは命令だ」
「……わかったわ」
アーニャの返事を確認してから、僕は自室への道を辿って行く。明かりの灯ったエントランスからは、「俺は帰らん! 帰らんぞーっ!」という往生際の悪い男の声がした。
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