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引き込み禿、引き込み振袖新造を経験した少女は、行く末は花魁になることを期待されていた。
引き込みというのは、普通の禿や新造達のように大部屋で生活するのでなく、楼主一家と共に奥で生活し、その間に様々な芸事を教え込まれる新造までの少女のことである。
しかし少女は全くもって花魁なんぞになりたくはなかった。花魁になれば禿の生活費なども入り、借金が増えるばかりである。
しかし楼主が決めたことに女郎が逆らえるわけもない。
自分の運命を受け入れるしか生きる方法はなかった。
(私を身受けできる御仁が現れれば良いのに。)
真空を見上げて、幾度となくそう思った。
空は近いようで遠い。大門も同様に遠い存在であった。
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