4858人が本棚に入れています
本棚に追加
/351ページ
「う……」
無意識に漏れ出た自分の声に、はっとした。晴馬の唇から赤い血が滲んできたのを見て、私の心臓は更に縮みあがった。
「……ごめん。今のは俺が悪いよな」
トーンダウンした晴馬がしょんぼりとしながらつぶやいた。さっきまでとはまるで別人のように萎縮した彼は、椅子に腰を下ろしてため息をつく。
「つい、欲情してなりふり構わずお前を襲うところだった。あっぶなぁ……」
教師になりたての大の大人とは思えない口調で、少しいじけた少年のようにそう言った。
私はまだ震えていた。脚がガクガクして、立っているのもやっとで……。
晴馬は立ち上がり「ここに座って落ち着こうか」と私の手を取る。
今度はまるでレディーファーストのような紳士的な態度で、私をゆっくりと引っ張って椅子に腰を下ろしてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!