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電気ポッドで沸いたばかりのお湯で、以前私が買い置きしておいたレモンティーのパックを開き、真っ白いシンプルなマグカップふたつにお茶を作ってくれた。
畳んであったもうひとつのパイプ椅子を隣に設置した晴馬は、斜めだけ私に身体を向けるように座って脚を組んだ。
「……落ち着かなくちゃいけないのは、俺の方だよな。ごめんな、夏鈴。本当に、調子に乗って悪かった」
両膝をくっつけたまま震え続ける私の頭に手をのせて、ポンポンと優しく叩いてくれる。
その表情が、私の知っている懐かしい顔そのもので、今こうして目の前にいる大人の男性があの東海林晴馬であることを改めて実感できた。
この優しい感じ……。
この優しいけど少し意地悪な感じ……。
―――― キュン、と胸の奥が疼く。
鋭い痛みがジワリと甘く広がる波紋のように全身に広がった。
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