第4章 逃げてきた男

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 朝が来る。  それが、こんなにも怖いと思うようになるなんて、少し前の自分からでは想像もできなかった。  天井の低い小さなワンルームの敷きっぱなしの布団にくるまったって、全然眠れやしない。  不定期にやってくる呼び出しに一喜一憂するたびに、不眠症という名の不可解な症状が生活の半分程に暗い影を落とすようになってからもう一年以上にもなるのに、俺は手を打つこともせずただ流されて翻弄される道を選んでいただけなのかもしれない。  せめて一度ぐらい立ち止まって冷静に振り返っていれば、ここまで悪化することもなかったんじゃないか。  そう思う反面……いや、違うな。  そうとわかっていながら、俺は貪るように彼女の体温を欲し続けたんだ。  彼女には人生を捧げた相手だっていることは、出会った時点でわかっていた。  俺にも当時は恋人と呼べる女がいたけど、そんなことどうでもいいと思ってしまうほどに彼女の笑顔と甘い誘惑に身も心も溺れた……。
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