第4章 逃げてきた男

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 今だからわかるけど、俺は最初から彼女に惹かれ、彼女を抱きたいと思っていたんだ。それがある日偶然見てしまった彼女の恥ずかしい秘密をきっかけに爆発して、気付けば彼女と深い仲に転がり込んでいた。  彼女には一言もそんな話を聞き出すこともせず、二人きりで合えば食事も忘れて求めて貰えるままに求めた。それだけだ。  婚約して、そのうち結婚式をあげるという話を職場の誰かからぼんやり聞いた後も俺たちの不埒な関係は続いた。ただ、初めから最後まで変わらなかったことがあるとすれば、彼女の都合に合わせるカタチでだけ俺は呼び出され、どんな場所であっても彼女が欲情していれば、その飢えを満たしてあげることが俺に与えられた使命だった気がする。  今となっては彼女をどこまで愛していたのかさえもわからない。彼女の何にそんなに惹かれていたのかさえも……。  情事の最中は自分じゃなくなる場面がたびたびあった。シチュエーションが変わると俺の役目も自然と変化して、彼女が喜ぶのならなんでもしてあげたくなっていた俺はアブノーマルプレイだって躊躇なく付き合った。欲求不満な彼女はいつも刺激的な下着を身に着けて、職場ではそんな顔ひとつも見せずに出来る女を気取って、俺の前では自分の欲望に正直であけっぴろげで危うくて……。  そのギャップに脳がやられっぱなしだった。
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