第4章 逃げてきた男

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 スーツ姿から徐々に乱れていく彼女は美しく妖艶で、毎回新しいセリフをぶっこんできて俺の正気を粉々に叩き潰した。オンとオフを見事に使い分ける彼女の巧みさがミステリアスでありセクシーであり、そして俺を淫らにさせた。同僚が帰宅した後のオフィスで平日でも度々愛し合った。  海外出張から戻った社長に、彼女はキャラクターを変えてイチャつきだした。事情を知らない俺は見ていて酷くイラついたが悟った。そして、その直後に初めて彼女の婚約者が社長だと知った。  彼女への尊敬の念も恋心も上司としての信頼も、全てが壊れた。  俺はただ悪い夢を見ていた……。  そう思いたいのに、彼女は俺に吐いた嘘を正当化するばっかりで自分は被害者だと開き直った。  仕事を獲るために女の武器を使う連中に嫌悪した。  俺はただ、彼女の睡眠導入剤として何も知らず彼女を抱いていたに過ぎない……。
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