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今も、見える。またあしたと、そう言って別れた日そのままの彼女が東屋の下にいる。そんな筈はないのに、確かにそこに友達がいる。
幻覚を見ているのだろうか。だとしても、十数年ぶりに親友の姿を目にしたことが嬉しくて、声をかけようとした瞬間、とんでもない寒気が背筋を伝った。
話しかけてはいけないと本能が叫ぶ。ここにいることさえダメだと訴える。
走り去りたい気持ちが募ったが、足が思うように動かず、私はじりじりとした後ずさりで公園の端まで下がった。
そこで、確かに聞いた。
間違いなく死んだ友達の声だった。
昔と同じ声と喋り方。でももう懐かしさは感じない。ただただ恐怖だけが全身を包む。
「◯ちゃん、まだかなぁ。…ずっと待ってるのに…」
固まりそうになる足を必死で動かし、私は公園の外に出た。その途端自由に動くようになった両足で、私は自宅まで全力で逃げかえった。
そこからは、もうあの公園には近寄らないまま規制の残り日数を過ごし、地元を再び離れて一人暮らしのアパートへどうにか戻った今は、今後は帰省すらろくになくなっている状態だ。
待ち合わせの場所に、今も彼女はずっといるのか。来ない私を待っているのか。十年以上もたった一人で。
それを思うと心苦しいけれど、昔のままなのに恐怖しか感じなかったあの声を聞いてしまっては、もうあの公園へ向かう気にはなれない。
またあした。そう交わした最後の約束は、これからもずっと果たされることはないだろう。
またあした…完
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