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既に夜は更けていた。
二つの尖塔を両脇に抱える宮殿は、青紫の空気の中、二つの月に照らしだされた輪郭を際立たせている。舞踏会の招待客は既に疲れ、紳士や淑女たちは家路に向かっている。
雑然とした空気の中で、小さな人影が、一人バルコニーに立ち尽くしていた。
それは舞踏会の中でも最も年若い出席者の一人で、まだあどけなさの残る少女だった。
少女は白い色をした袖なし服を着、銀色の豊かな髪を腰の辺りで波打たせている。ダイヤモンドの小さなティアラの前面にはいびつな形をしたアメジストが飾られていたが、その宝石の素晴らしい紫の色は、少女の瞳の色とぴったり同じだった。
プラチナの塊のような少女は、純白のパンプスを脱いで手に持ち、安堵の溜息をつく。
涼しい夜風と冷たい大理石の感触。
少女の疲れは穏やかに外の風に癒されていく。
しかし唐突に、一人きりの時間が破られた。
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