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しかし、力の篭ってない一撃は、義経に簡単に受け止められ、片手で鷲掴みにされた薙刀は、義経によって投げ捨てられてしまう。
弁慶自身も投げ出され、地面を転がり、情けない声をあげる。
「あぁ!」
無情にも、橋の下へと消え去る薙刀。
それを、ただただ見守っている弁慶。
その背後から、重い足跡が響き渡る。
鎧の繋ぎ目から擦れる金属音は、振り返らなくても分かる。
先に自分が攻撃した相手、義経に他ならない。
「おい!」
「ひっ!」
逃げ出そうにも、腰が抜けてとても出来ない。
大声で呼ばれると、恐怖で震える身体をぎこちなく動かして、上半身だけで振り返るしか弁慶には出来なかった。
恐怖に震えが止まらず、引きつった顔をする弁慶の顎に手をやり、グイッと引き寄せた義経。
鼻先が触れあいそうなほどの距離にある顔に驚き、顔を背けようとするも、義経の力には勝てず、ピクリとも顔は動かない。
僧の身分とはいえ、所詮は女人の身。
敗者が勝者に何をされるかなど知れたこと。
観念して目を閉じる弁慶だが、義経の発した言葉に呆気を抜かれた。
「お前、なぜ俺を攻撃した?」
「え?」
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