裏史実

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草木も眠る丑三つ時。 人気のない京の都を歩く筋骨隆々の大男。 腰に太刀を引っ提げ、頭には、金ぴかに光る立派な飾りをつけた兜。 雑兵とは明らかに違う、風格ある武士である。 年は若いながらも、その面構えは鋭く、何度も死線をくぐり抜けてきた風格を持つ様は、男の生い立ちを如実に語っている。 男の名は義経。 昔に、平家と源氏が争った際、源氏は敗北した。 まだ幼かった義経は、情けをかけられ、命を取られる事はなく、鞍馬の山寺に預けられていた。 しかし、その山寺こそ、かの有名な鞍馬の烏天狗の巣窟である。 平家に敗れ、死した一族の復讐と、再興を夢見て、かの地において、それこそ命がけで烏天狗の元で鍛錬に励んだ義経。 しかし、寺にいながら、僧への道を進まない義経を平家は快く思わず、身の危険を悟った義経は、平家の力が弱い東国へと身を寄せる事にした。 京の都を東へと歩む義経。その前に、五条大橋が姿を現す。
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