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この五条大橋には、武士は近づかない。
武家が政を行うようになってから、この橋には修羅が現れるという噂がたったからだ。
修羅は、橋を渡ろうとする武士に戦いを挑み、その命を奪うという。
始めこそ、腕試しに修羅に挑む者もいたが、半年を越える頃、挑んだ武士の数は百を越え、生きて戻った者は誰一人いない事が知れ渡った頃、修羅に挑む者はいなくなった。
この時代の武士は、平氏と源氏。
覇権をかけた戦に敗れた源氏の武士は、既に京の都を去り、残るは平氏の武士。
彼らは、日の本の覇権を握り、争う必要のない身分を持つ天上人。
ゆえに、己の研鑽のために闘う勇者などほとんどおらず、僅かにいた勇者は、修羅の下に消え去った。
そして、武士は五条大橋に近寄るべからずという、暗黙の了解が出来上がった。
しかし、人目を避ける必要があり、かつ先を急ぐ義経は、あえて五条大橋を進む事にした。
そもそも、烏天狗という人外の怪物に鍛え上げられた義経は、例え相手が修羅であろうと負けるとは思っていなかった。
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