引き立て役だなんて思ってないよ

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 その後、ちょっとだけ雑談をして、また駅まで送ってもらってから別れた。佐野君はなだめるような穏やかな笑顔をずっとしていた。  家に帰って一人の部屋。制服を脱ぎ捨てて中学のジャージに着替える。ベッドに倒れ込む。  早く起きて巻いた髪が崩れるけど気にしない。どんなにお洒落しても意味がなかった。堂本君が選んだのは別の子だ。返せ私の睡眠時間。  ゆっくり息をはく。名前呼んでもらってあんなに嬉しかったのに。ついこの前のことだったのに。  告白も、できないなんて。  見慣れたピンクのベッドカバーが滲む。目を閉じる。頬が濡れた感触。  ホントだ、一人になると泣けるんだね。終わってしまったんだ。  しばらく目を閉じたままでいた。でもそんなに落ち込んでいないのは、多分あの笑い顔が頭から離れないからだ。  どうして佐野君はあんな風に笑うんだろう。瞳を優しく細めて、口角をあげて、黒いフレームに隠すように少しだけうつむいて軽く眉をひそめるようにして。  どうしてあんな顔するんだろう。
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