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その後、特に何も起こらないまま、気づいたら12月になっていた。もうすぐ期末があって、そして一年が終わる。
あれからなんとなく気まずくて、ベランダから外を見る事もなくなった。
佐野君は何事もなかったかのようにしてくれている。
試験前一週間は、委員会・部活動休止期間だから、生徒会もお休み。毎日のように顔を出しているから、まっすぐ帰るのはなんとなく変な気分。
図書室で勉強してから帰ろうかなぁ、と普段足を向けない図書室まで行ってみたら、
「堂本君?」
入口の前で廊下に座り込んだ堂本君がいた。
「あ、白井さーん」
ひらひらと動く右手。
「何してるの?」
「んー、カノジョ待ち」
笑う。
「帰りに一緒に勉強しようって。最初、超嫌がられたけど」
笑う。嬉しそうに。
「そう、なんだ」
「なんかひさしぶりーだね。最近、ベランダに出てないからどうしてんのかなーと思って」
にこにこと笑いながら言う。相変わらずの茶色くて柔らかそうな髪、気崩した制服。一つだけ違うのは、胸に下げられているアクセサリー。
「んー、最近外寒いし」
「まあ、冬だもんねー。でも、また見てよ、俺のスーパーシュート! 清澄も気にしてるし」
「佐野君が?」
「そー」
そっか、心配されてるんだろうなー。失恋したわけだし。
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