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「ありがとう」
「うん、ごめんね」
「ううん。……ねぇ、堂本君」
「ん?」
「笑って」
確かに見た目で好きになったのかもしれない。ミーハーなのかもしれない。それでも、一番のきっかけはシュートを決めた時の笑顔。そのあとも見るたびに彼は笑っていた。
あの顔に惹かれていたのは、間違いない。
堂本君は、ゆっくりと笑みをつくった。いつもよりも強張ったような顔。でも、それでも十分だ。
「ありがとう」
また泣きそうになるのを堪える。そろそろカノジョか、他に誰か来るだろう。
「またね」
「うん、ありがとね」
いつもみたいに堂本君が片手をふる。出来るだけ微笑むと、図書室には背を向けて、堂本君の隣を通り抜けて、廊下を、階段を駆け抜ける。
じくじくと胸が痛い。それでも、少しだけすっきりした。言えて良かった。
好きって言えて良かった。
唇を噛む。泣くのは家に帰ってからだ。
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