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次の日の昼休み、意を決してベランダにでた。すこし、ためらいはあったけど。
「友梨久しぶりじゃん、外出るのー」
「だって寒いじゃーん?」
美優の言葉に曖昧に返事する。美優は相変わらずお昼ご飯代わりの野菜ジュースを飲んでいる。
「ホント、寒いよー」
コートを着ててもやっぱりベランダでじっとしていると寒い。
「はー、しかし、堂本君達は元気だねー」
「ホントよねー」
今日も変わらずバレーもどきをしている。五人で、どういうルールなのかはわからないけど、なんだか楽しそうだ。
「はー。しかし、堂本君はやっぱりかっこいいねー。カノジョうらやまー」
ため息と一緒に美優が言う。
「そーねー」
適当に返事する。
転がったボールを追いかけていた堂本君が顔をあげる。目が合う。少し驚いたような顔をして、それからゆっくりと、笑った。
「白井さーん」
答える様に手をふる。何事もなかったかのように接してくれてる。だから、大丈夫。
堂本君の後ろで、佐野君も片手を振った。少し、安心したような顔。
そしてまたバレーに戻る。
視線で追うのは、大人しめの黒髪。堂本君たちのグループ、他は皆運動部なのにちゃんとついていけるっていうのは、それなりに運動も出来るんだろうなー。
「ねー、佐野って、新しい会計なんだよねー?」
「生徒会の? そうだよ」
「はー、ちょっとかっこいいよねー。そういうインテリ系も」
「インテリ?」
「堂本君とかは目立つけど、そうじゃない落ち着いた大人っぽいかっこよさっていうのもいいよねー」
美優が頬杖をついたまま言う。
「そーかしらねー」
適当に返事をする。胸がざわざわする。なんか、嫌だな。
「でもちょっと頼りないかなー」
「あー、そうなんだー。友梨、仲がいいもんねー」
そうだよ、と言いながらも、もやもやが晴れない。
頼りない? 嘘つき。あんなに色々助けてもらったのに。私の嘘つき。
黒髪を目で追う。
頭をよぎるのは「引き立て役」と笑ったあの時の顔。
「ねー。本当に寒いから中はいろうよー」
美優の言葉に軽く頷いて、教室に戻る。ちらっと校庭の方を見る。黒髪と、目があったような気がした。
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