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色恋沙汰はさておいて、明日から期末試験。さすがにみんな帰るのがはやい。明日は、英語と生物か。頭の中で予定をたてながら、帰ろうとする。いつもの通り、生徒会室の前を通りすぎて下駄箱に向かい……、あれ? 生徒会室電気ついてた?
戻ってそっとドアをあける。
きしんだドアの音に、中にいた人の肩がびくっと動く。
「……なんだ、佐野君」
「し、白井さん。うわー、びっくりした」
照れた様に笑う。
「どうしたの?」
「電気ついてたから……。佐野君こそ、なにしてるの? 今日、生徒会ないのに」
「ああ、会計の仕事終わらなくて。今日中にやっとかないと」
「一人で? もう一人の、花山さんは?」
「明日の試験、赤点とりそうでやばいんだって」
いってくすくすと笑う。
「泣きそうな顔するから。俺はまあ、英語と生物は得意だから」
やばいのは明後日の数学、と笑ったまま続ける。
「だからって何も一人でやらなくても……」
「まあ、すぐ終わるし。これぐらいやらないとさ、俺役に立たないし」
言って笑う。あの時みたいな笑い方で。なんだろう、なんか、もやもやする。
「……なんでいつもそうやって卑下するの?」
「え?」
「堂本君が言ってた。球技大会の時、勝ったのは佐野君のおかげだって、佐野君が、皆を上手くまとめてたからって。尊敬してるって」
「堂本が?」
驚いたような顔をする。
「私、だって」
どうしよう、なんだか泣きそうだ。
「私だって、佐野君には沢山助けてもらったのに。堂本君のことで協力してもらったし、ふられた後だって慰めてもらったし。佐野君のおかげなのに。もっと図々しくしたっていいのに」
「白井、さん……?」
「私は、」
そうだ、あの時から感じてた気持ち。ずっと思ってたこと。もやもやしてた感情。
「引き立て役だなんて、思っていないよ?」
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