11人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
話をしていると、佐野君が顔をあげた。目が合う。佐野君はゆっくり微笑むと右手をあげた。隣の堂本君もこちらをみると、Vサインを作ってくる。
「白井さんみたー? 今の俺のスーパーシュート!」
両手をメガホンにして叫ぶ。返事の代わりに私も手を振った。教室二階でよかった。
堂本君は嬉しそうに笑う。
「やだ、友梨すごーい! 堂本君に名前覚えられてるじゃーん」
バシバシ肩を叩かれる。おばちゃんかよ。
「まあ、ね」
コートに戻る彼らを見ながら曖昧に返事する。途中で佐野君が振り返ると、一度悪戯っぽく笑って右手をあげた。
どきっとする。
「んー」
再びはじまった試合を見ながら美優が眉をひそめる。
「友梨さー」
「うん?」
「勘違いされてない? 佐野に。仲がいいのは佐野に好意があるからって思われてるんじゃないのー?」
「まさか」
笑うと、美優は真面目な顔して、
「だめよ、友梨。ああいう真面目そうなタイプは勘違いしちゃうからね」
私の両手を掴み言う。
「はいはい。教室戻ろうよ、ちょっと寒い」
笑みを浮かべていいながらも、どきっとする。
美優には言えないけれども、それは絶対にない。それだけは言いきれる。
最初のコメントを投稿しよう!