引き立て役だなんて思ってないよ

4/21
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 堂本君が目立ちはじめたのは、今から半年ぐらい前、ゴールデンウィーク明けの新入生親睦球技大会だった。  入学したばかりで、皆まだきちん制服を着て、中学生から抜けきれていないのに、彼は明るい茶髪で目立っていた。真新しいジャージもだらしなく着こなして。先生には怒られていたけど。  自分のクラスの応援なんかそっちのけで、目立つ彼を見ていた。  そんな中でのバスケで得点王。ボールに向かう真剣な顔とシュートを決めたあとのはじけるような笑顔のギャップ!  堂本君の人気はそこからはじまった。  堂本君みたいになりたくて髪を染めた。先生に怒られるのが怖かったから、彼よりは何トーンも暗い茶色だけど。  違った自分になったみたいでドキドキした。もう中学生じゃないんだなって思った。  校則通り膝にかかるぐらいのスカートも折って短くした。真っ黒なセーラー服は可愛くないから、寒くはないけど薄茶色の綺麗なカーディガンを着た。ワンサイズ大きめでスカートと指先が隠れるように。小さくて可愛い私。  お化粧の仕方も勉強した。してないように見えて、でもいつもより可愛くなるように。  そんな時、同じ生徒会役員の佐野君と仲がいいと知った。その時、ラッキーと思ったのは事実だ。  二人は一緒にいることが多い。佐野君と挨拶すると必然的に堂本君とも顔をあわせることになる。 「あ、佐野君。今日は広報紙つくるって」 廊下であってそんなことを話す。堂本君は隣にいる。立ち去った後背中で聞いた 「あれ誰? 可愛いじゃん」  って言葉には思わず笑みがこぼれた。ケータイで録音したい、あの声でアラームかけたい。  だから、正直佐野君を利用していた。そのつもりだった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!