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「いや、そうかなーと思って。最近、俺を通して堂本と仲良くなろうとしている女子、多いし」
佐野君はさっきより少し強めに地面をけった。慌てて小走りで追いかける。
「白井さん可愛いしさー、優しいしさー、もし堂本狙いなんだったら、ちゃんと言っといてもらおうと思ってー」
地面を蹴る。
「勘違いして好きになったら困るじゃん?」
さらっと言われた。
足が止まる。
少し進んだところで、佐野君も自転車を止めた。彼が振り返る。
「いや、別に今好きなわけじゃないからね? ちょっといい子だなーって思ってるだけで」
だからそんな引かなくても、と彼は困った様に笑う。
「お互いのためにもさ、ここではっきりさせた方がよくない? 協力するよ?」
佐野君が言う。
「そう、です」
「やっぱりねー」
何故か勝ち誇った様に佐野君はいうと、もう一度、今度は弱く地面を蹴った。
遅くなった自転車に慌ててとなりに並ぶ。
「よく、わかったね」
「うん、だから最近そういうの多いんだよ。まあ、堂本あんなんだし。別に俺ああいう目立つタイプじゃないし。なんていうの、絶賛引き立て役?」
けらけらと笑う。笑ってはいた。
「引き立て役……」
「そうそう。まあ、白井さんが堂本と話せる様に気使うからさー」
だから、と佐野君は前を見たまま言った。
「がんばって」
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