痛いの痛いの飛んでいけ

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―――――― 僕の名前はあさひ。 東洋の島国では、「朝、東から昇る太陽のこと」を表すらしい。 今、僕が叩き起こそうとしているのが、命の恩人であるレイ。 名前を忘れていた僕に、名前をつけてくれた。 それだけでなく、僕がうんと小さい頃に拾ってくれて、此処に住まわせてくれて。 あのときから随分時が過ぎ、今では僕も年を重ね、外見も内面も成長したのだ。 「レイ! おーきてっ!」 「ん……もう朝か。毎度毎度すまないな、あさひ」 真っ黒の長い髪のほつれを、それと対照的な白い手で直しながら謝る。 黒くて艶やかな長い髪に、すらっとした身体。 見た目からどことなく完璧そうな感じがうかがえるが、彼女は朝に弱い。 朝御飯の担当はいつも僕だ。 着替えるからと部屋から追い出された僕は、リビング兼ダイニングで、湯気をたてる朝御飯を皿に盛り付ける、 レイは恥ずかしいのか、同性の僕にさえ裸はおろか手先と顔以外の肌を見せてはくれない。 ある日、レイが誤って腕に火傷を負ったとき。 長いワンピースの袖を捲ろうとしたとき、ものすごい勢いで拒否されたことがあるのを思い出した。
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