Act.2 変わってゆくということ

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「だからホントに、全然。司が心配してるみたいな、お金に困ってるとかじゃないから」  心配かけてごめんね、と畳み掛けるように言えば、うん、とまだほんの少し何かを疑うような目で頷いた司が 「…………でも」 「──ん?」  きゅっと唇を噛んで何かを覚悟したみたいな顔に変わって居住まいを正す。 「オレも、バイトすることにしたから」 「──へ?」 「ちゃんと、したい」 「……何を?」 「そういう、お金のこととか。颯真に甘えるみたいだったから。オレも、バイトする」 「司……」 「オレ……ちゃんと、颯真と並んで立ってたい」 「……」 「だから、ちゃんとしよう。オレ、ホントに。……ホントに色々、甘えっぱなしだったなぁって、めちゃくちゃ後悔したんだ。もしかしてお金足りないのかなって思った時に、やっと気付いてすごい情けなかった。結婚したいとか、一緒に暮らしたいとか言いながら、全然現実的じゃなかったなって、すごく恥ずかしかった」 「司……」  また泣き出しそうになりながら一生懸命紡ぐ司の声が、オレの心を抉る。  オレだってそんなこと、少しも考えていなかった。  オレだけの司だと──誰にも渡さないと言いたいがためだけに指輪を買おうとして、バイトを増やしていただけだ。  二人で暮らすためのお金のことなんて、何も考えていなかった。 「……もう決まってるんだ」 「ぇ?」 「バイト先」 「……ぁ……そう、なんだ」  司だけが先へ進んでしまったみたいな、情けなさと焦燥感に陥ってるオレを置き去りにして、司がそっと押し出した言葉に、ついていけない心がオロオロしたまま呆気に取られたみたいな声で呟く。 「……ホントはね……章悟と、付き合ってすぐくらいにバイトしてて。けど、章悟のことがあって、色々いっぱいいっぱいで続けらんなくて辞めたんだけど……。今回ダメ元で行ってみたら、おいでって言ってくれたんだ」 「……そっか。…………どんなとこなの?」 「んとね。カフェ」 「カフェ?」 「うん。ちっちゃいカフェ」 「なんかちょっと意外だったかも」 「ん。だろうね」  くすっと笑った司が、ぎこちなく笑う。 「章悟がね、紹介してくれたとこだから。オレが人見知りするって知ってて雇ってくれたんだ」 「……そっか」  にこりとほんの少し哀しい目になって笑う司の頭をそっと撫でながら、空いた方の手をぎゅっと握りしめる。
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