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「………………ちょっと、色々……」
「色々ってなに!?」
「…………その……」
正直に言うか言うまいか悩んでいたところに、冷蔵庫がピーピーと音を立てる。閉め忘れを防止するアラームが鳴っているのだと気付いて慌てて扉を閉めてから、
「……司は……」
「ん?」
「今日はどうしたの?」
約束してなかったよね? と聞けば、今度は司があうあうと口籠もった後。
「…………ごはん、作りに来た」
「ごはん……?」
「…………店長がね、教えてくれたんだ。……おかず作ってタッパーに詰めて冷凍しといたらいつでも食べれるって。……最近颯真、なんかちょっと変だったから。……疲れてんのかなって……ちゃんと食べてんのかなって心配になって……」
「司……」
「そしたら颯真の冷凍庫、思ってたよりちっちゃくて、あんま入んなかったよ」
くしゃっと笑った司が、だから冷蔵庫に入れといた、と照れ臭そうに笑うから。
「────ホントに」
「?」
「結婚して司」
「…………は?」
心が突き上げられたみたいだった。
噴火するみたいな勢いで湧き上がった想いが口をついて出て、堪えきれなくて司を掻き抱く。
「ごめん…………ずっと訳分かんないくらい嫉妬してた」
「しっと?」
「…………司が、オレの知らない誰かと歩いてんの見かけて……ソイツ誰だよって、ずっとイライラして不安で堪んなくて……格好悪いなって思うのに止めらんなくて、ずっと電話したりしてた」
「そうま……」
ごめん、と呟いて、抱き締める腕に力を込める。
「すんごい嫌だった。……誰かと一緒に歩いてるのも、誰かと笑ってるのも。……オレ以外と話して欲しくないとさえ思った」
「……」
「……誰かが司のこと盗るんじゃないかって……ずっと不安だった」
ホント格好悪いよなぁ、とぼやきながら華奢な肩に顔を埋める。
「だけどずっと、司に傍にいて欲しくて……傍で笑ってて欲しくて……誰かに盗られたらどうしよって恐くて堪んなかったんだ」
「そうま……」
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