Act.4 君だからこそ

7/10
前へ
/40ページ
次へ
「………………ちょっと、色々……」 「色々ってなに!?」 「…………その……」  正直に言うか言うまいか悩んでいたところに、冷蔵庫がピーピーと音を立てる。閉め忘れを防止するアラームが鳴っているのだと気付いて慌てて扉を閉めてから、 「……司は……」 「ん?」 「今日はどうしたの?」  約束してなかったよね? と聞けば、今度は司があうあうと口籠もった後。 「…………ごはん、作りに来た」 「ごはん……?」 「…………店長がね、教えてくれたんだ。……おかず作ってタッパーに詰めて冷凍しといたらいつでも食べれるって。……最近颯真、なんかちょっと変だったから。……疲れてんのかなって……ちゃんと食べてんのかなって心配になって……」 「司……」 「そしたら颯真の冷凍庫、思ってたよりちっちゃくて、あんま入んなかったよ」  くしゃっと笑った司が、だから冷蔵庫に入れといた、と照れ臭そうに笑うから。 「────ホントに」 「?」 「結婚して司」 「…………は?」  心が突き上げられたみたいだった。  噴火するみたいな勢いで湧き上がった想いが口をついて出て、堪えきれなくて司を掻き抱く。 「ごめん…………ずっと訳分かんないくらい嫉妬してた」 「しっと?」 「…………司が、オレの知らない誰かと歩いてんの見かけて……ソイツ誰だよって、ずっとイライラして不安で堪んなくて……格好悪いなって思うのに止めらんなくて、ずっと電話したりしてた」 「そうま……」  ごめん、と呟いて、抱き締める腕に力を込める。 「すんごい嫌だった。……誰かと一緒に歩いてるのも、誰かと笑ってるのも。……オレ以外と話して欲しくないとさえ思った」 「……」 「……誰かが司のこと盗るんじゃないかって……ずっと不安だった」  ホント格好悪いよなぁ、とぼやきながら華奢な肩に顔を埋める。 「だけどずっと、司に傍にいて欲しくて……傍で笑ってて欲しくて……誰かに盗られたらどうしよって恐くて堪んなかったんだ」 「そうま……」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加