Act.4 君だからこそ

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「あんな顔して笑ってくれるの、オレだけの特権みたいに思ってたのに、違うんだって気付いて……オレじゃなくても司は笑えるんだって気付いたら恐くなった。……あんな顔……見たら誰でも司のこと好きになるに決まってるから……いつか誰かに盗られるって……」  不安で恐かったんだと呟いたら、ふぅー、と大袈裟な溜め息が聞こえて恐る恐る顔を上げたら、司は呆れ返ったみたいな顔で大袈裟に眉を八の字にしながらも、口元をヤレヤレというかのように歪めて笑っていた。 「ばっかだなぁ」 「…………」 「他の誰がオレのこと好きになったって、盗られたりしないよ」 「でもっ」 「──だってオレ自身は、颯真のことが好きなんだから」 「…………つかさ……」 「だいたい盗られるってなに。オレの意志はどこにいっちゃったの」 「ぁ……」 「オレは颯真のことが好きなんだよ? 盗られたりしないよ」  バカだなぁ、と笑った司が、わしわとオレの頭を撫でる。 「オレのこと信じてよ」 「……信じてるよ」 「じゃあなんで」 「分かんない…………分かんないけど…………オレじゃなくてもいいのかって、思っちゃったから……」 「……………………颯真ってなんか……時々めちゃくちゃ不器用っていうか……なんていうか……」 「……」  呆れたのか困ってるのか、ふぅと大きな溜め息を吐いた司がそっと笑う。 「颯真がいてくれたから他の人とも笑えるようになったんだよ」 「……」 「颯真がずっと、傍にいてくれるって分かってるから、笑えるんだよ」 「……司……」 「章悟がいなくなって、全部どうでもよくなって……何にもない毎日だった。……生きてんのか死んでんのかも分かんなかったオレを、ずっと支えてくれたんだよ、颯真が」  ふふ、と照れ臭そうな色を浮かべた目が、ほのかに潤む。 「颯真じゃなくて良いなんて、言わないでよ。オレはちゃんと颯真のことが好きなんだから」 「司……」 「──だからずっと心配してた。…………なにしてたのずっと」  潤んでしまった自分の目を隠すみたいにして目を閉じた司が、照れ隠しみたいなノリでいきなり話の矛先をオレに変える。
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