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「そういえばさ」
「ん?」
颯真が朝のコンビニシフトを終えて帰ってきた午後。
少し前から気になっていて聞かないとと思っていたことを、ようやく思い出して颯真に声をかけた。
「オレ、指輪って1回もしたことないんだけど、サイズとか分かんないと買えないよね?」
「──ぁ」
ホントだ、と呟いてこっちを見た颯真が照れ臭そうに笑う。
「全っ然考えつかなかった」
「んもー……」
呆れて笑い返したオレに、でもちょうどよかった、と笑った颯真がゴソゴソとクローゼットを探って、サイズの割にはずっしりと重そうな紙袋を出してくる。
「なにそれ?」
「指輪のパンフレット」
「ぇ!? そんなの集めてたの!?」
「違う違う。店員さんがくれたの」
照れ臭そうな苦笑いを唇に載せた颯真が紙袋からたくさんのパンフレットを取り出して、その中から1冊だけを選んでオレに手渡してくれる。
「それ、オレが買おうとしてたやつ」
「──15万!?」
「2人分だから倍するんだけどね」
「ちょっ…………そんな高くなくていい」
「いくなかったの! なんか……こんなんただのオレの我が儘っていうか、ちっちゃいプライドだけどさ。下手に安いってか、チープなの贈って他の誰かに見下されたくなかったって言うか……。……何よりさ。似合うだろうなぁって思ったんだよ、司の手に」
「けど……」
よくよくパンフレットを見れば、あくまでも最低価格が15万円で台座の素材や石の数によっては20万円以上になるようだ。
「…………でも、オレも色々とさ……店員さんに言われて、思った」
「なにを?」
「2人ともが気に入って長く使えるのが一番だって」
「……」
「一生付けるんだから、2人とも気に入らなきゃって」
「……」
「……けどさ、だからって2人一緒に店に行けるかって言ったら、行けないでしょ。だから、どうしよっかなぁって思って悩んでたんだよね」
「そうま……」
どうしよっか、と困った顔で笑う颯真に、そっと首を振る。
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