95人が本棚に入れています
本棚に追加
オレの勢いにポカンとした顔で驚いてた司が、ぷっと難しい顔して笑う。
「ちょっと、ご飯飛んだよ今」
「ぇ、うそ、ごめん」
「もー、そんな頬張るから」
「ごめん。だって美味しくて」
もごもご謝りながらどこに落ちたのかとキョロキョロしていたオレの頭に、そっと司の手が触れてくるから、窺うように視線を上げた。
「……心配。颯真のこと」
「……」
「オレ来たら、なんか疲れてるのに無理して頑張らないかなって……心配」
くしゅ、と淋しそうに笑った司の労る手が、優しくオレの頭を撫でてくれる。
「……無理なんかしてないよ」
「……でも」
「だってオレが頑張れるのは、司がいるからなんだよ。帰ったら司がいて、おいしいご飯があって。そしたら疲れなんかすぐにどっか行っちゃうから」
「そうま……」
「ホントに。ホントに司の顔見て、声聞いて。一緒に寝れたら、オレそれだけで幸せだから」
縋るみたいな気持ちでそう捲し立てたら、困った顔してた司がふっと笑う。
「……うん、分かった。じゃあ、来週も来る」
その言葉にありがとう、と笑うつもりが、司が続けた言葉に遮られる。
「──でも」
「……でも?」
「あんまり無理しないで。手伝えることあったら、なんでも言って。ご飯は作るけど、それ以外でも。掃除でも洗濯でも、なんでもするから」
「つかさ……」
「颯真が……倒れたりしたら、嫌だから」
「……うん、ありがと」
思い詰めた目で司に見つめられて、大丈夫だよと微笑い返して薄い頬をさわさわ撫でる。
「大丈夫。司さえいてくれたら、ホントに。疲れなんて吹き飛んじゃうから」
いてくれるだけで十分なんだよと笑って、テーブル越しに体を乗り出して、触れるだけのキスをした。
*****
最初のコメントを投稿しよう!