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幼い時の写真だけじゃない、私が高校生、大学生、そして社会人になってから何度かいった家族写真にも、同じようにコメントが書かれていた。
「ずっと知らなかった…」
小さい頃から写真が嫌いで、ぐずってばかりいたが今は少し腹立たしいし、申し訳なさを感じる。
「御両親もきっと恥ずかしかったんだろうね、2人とも恥ずかしそうに俺に話してくれたよ」
膝に置いたアルバムをもう一度、机に戻すと聖司さんは私の肩に手を置いた。
「実晴の御両親みたいに、素敵な家庭を築けるかはわからない。この先、転勤がないとは言えないし、実晴に迷惑も寂しい思いもさせてしまうかもしれない。
…それでも、一緒にいてくれますか」
くわっと込み上げてくる涙をグッとこらえて、私ははい、と何度も頷いた。
「ふ、ふつつかなものですが…私も聖司さんと一緒の時を刻みたいです」
「一緒の時を刻むか、いい言葉だね。もちろん俺も誓うよ、同じ時を刻むって」
どちらからということもなく抱き合った私たちは、そのまま深いキスを重ねた。
私のアルバムが私と聖司さん、2人のものになり新たな一ページを刻もうとしていた。
【完】
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