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序章 自分勝手な夜
ツインタワーがモザイク調にキラキラと輝いて、そのひとつひとつの窓の向こうでは様々なドラマがリアルタイムで更新されている。
冷たい夜の窓に背中を貼り付かせて、高揚し蕩けた顔をした俺と立ちながら愛し合うのは普段は真面目な顔した才色兼備の女上司。
彼女の小さな左手の薬指には婚約者から貰ったダイヤモンドの指輪が光っているにも関わらず、俺は自分の指を絡めて彼女の快楽を支配していく。
破けたストッキングの太ももを持ち上げて、柔らかな最奥へと突き進むと堪らない征服欲が俺を駆り立ててくる。
どういうわけかわからないが、この時の俺はこの禁断の関係に溺れ、自分が何者かを完全に忘れていた。
悩ましく歪んだ顔を向けた彼女のメガネを外さないでわざと焦らして俺の言いなりになるように誘導していくと、彼女は満足そうに微笑みながら下の名前を呼んでくれる。
その名で呼ばれるのは、本当は好きじゃない。
だけど、名前を呼ばれたいんだ。
誰に呼ばれたいのか?
――――― それが、問題だ。
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