おちた!

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うわ、やらかした。 こんなん嫉妬しとるの丸出しやん。 新田は、 ……………しょうは小学校んときから明るくて男女関係なく仲良いし優しいからそれなりにもててた。 それが最初は面白くなかった。 『オレ、今までみんなに昌って呼ばれとったけんがのぞむも昌って呼んでなっ』 高校入ってなんとなく仲良くなり始めた頃やった。 屈託ない笑顔で名前呼びを強要したくせに、自分はやっぱり慣れないからといつからか名字になっとったし。 わがままで強引なくせになんでこいつがモテとんやって。 最初は本当にただ面白くなかっただけやったのに、今は……… リノリウムの床と二人分の爪先だけが視界に写るくらい俯いて、早足をもっと早めてどくどく煩い音を隠すように教科書たちを抱きしめる。 冷や汗がじわりじわりと滲む。 「なんやって、拗ねんなやー かわいいな、藤田は」 変わらず涼しい顔して隣を早歩きする新田の言葉のせいでずっきゅんっと胸が苦しんだ音を立てた。 かわいいとか、 また、そうやって、てきとーなことを…… ただ単に告白されたのを羨んどると思っとる新田はわはっと笑って背中を叩いてくる。 ドンドンッ、と背中に響いてくる振動に心臓もおんなじ音を刻んでることにお前は気づかんのやろ。
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