新 「冥途」

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「それから?」 「それからな。どうやって、ここに来たのか。何で、ここにいるのか…」 「……ああ、そうだな。うん。確かにそうだ。俺も……」 「……」 「……」 「外の土手、な。さっきから、何か、通り過ぎてゆくなあ」 「……ああ、そうだな。うん。確かにそうだ。通りすぎてゆくなあ」 「影みたいなヤツがな」 「そうだ。影みたいに、スーッと、な」 「アレって、人間なのかな?」 「さあ……どうかなあ?」 「……」 「……」 「……そういえば、な。お前の顔…ずいぶん、崩れているなあ。ひひひ。ちょっと、人間に見えないぜ? ヒヒヒ」 「そういうお前の顔も、そうとうなモンだよ。顔面の半分、どこに置いてきたんだ? ええ?」 「……」 「……」 「……そろそろ俺たちも、行った方がイイんじゃあないのかな?」 「うん。そうだな。あの、土手の上にな……」 「急ぐことは、ないけれどなあ」 「ああ、急ぐことは、ない。ぜんぜん、ない」 「ゆうらり、ゆうらり、行こうか。ひっひっひ」 「そうだなあ。うん。影みたいに。スーッと、な。うふっ」 「ひひひ。ひひひひひ……」 「うふ。うふうふ。フフフ……」 「…………」 「…………」  あとは、ただ。一陣の風…
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