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私が恋した……
夕方過ぎ、サラリーマンが帰るには少し早い時間帯に私は改札口を出る。
その日は真っすぐ帰る気になれず、居酒屋の多い通りをだらだらと歩いていると、向こうから若い女性の二人組が歩いてきた。
ひとりはロングの黒い髪にヒールの入った靴を履いて
ミニの花柄ワンピースを着て、チェーンの小振りのバックを肩にかけていて。
もうひとりも、ミニのスカートに太めのヒールで
肩にバックをかけて、髪はショートで涼しげだった。
あまりジロジロ見ると嫌な顔をされてしまうので、
ちらりとみる。
そのまま彼女達とすれ違う。
すると、残り香が香る。
それはなんともいい難い匂いで、思わず振り返るほどだった。
そう。
香ばしくもスパイシーな香り。
私はときめいてしまった。
けれど、すれ違った彼女らは20代前後。
私はもう30半ばを過ぎたそろそろ本格的なおじさん。
いや、迷っている暇はない。
私は周りの酔っ払いや呼び込みの人達を気にせずに
走った。
そう
スーパーへ
スパイシーなあの香り、あの匂い食べずにはいられない。
どうしても残ってしまう焼き肉の匂い。
彼女らは焼き肉屋に行った帰りだったのだろう。
あぁ、帰ったら焼き肉にしよう。
私はタレと肉を求めて、衝動のままに
スーパーへ足を運んだ。
~私の恋した……焼き肉~
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