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香りの正体
流れてくる人々を、腰までの黒髪を束ねていて、黒いワンピースを着た専門職についていそうな女性と、それ以外に分ける。それだけイメージがあれば、このおとこふたりにとって、選別するのは簡単だった。
「先輩、あの人はどうですか?」
「いや、スカートの丈が短すぎる」
「じゃあほら、あの人はどうです?」
「いやー…胸が大きすぎないか」
「あっ。あの人なんかどうでしょう」
「歩き方が…その、官能的すぎる。嶋田、さっきからお前、自分の好みに反応してるだけじゃないか?しっかり探してくれ」
「そんなことないんですけどね、男の性ってやつですかね、つい。すみません」
よくよく見れば世間には本当に色々な人がいるものだ。男と女、大人と子供、ご機嫌な人や、そうでない人。これだけの人がいて、名前も顔も分からなくても香りだけで好かれる人もいる。しかもその人は後藤という文句なしの男性から好かれているのだ。今は少し変態であるということを除けば、彼は最優良物件であり無期限保証書付き。ちなみに従順な後輩もオマケで付いてくる。
「どの人なんでしょうか。俺も見てみたいです。先輩が好きになる人ってどんな人だろう。先輩の嗅いだ香りはどんな香りなんでしょうか。知りたいです」
もうすぐ日が落ちそうになっていた。街も人もオレンジに溶け込んでいく。
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