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告白
普段から通行人で賑わう通りだ。ましてや帰宅ラッシュともなればその賑わいは祭りのそれに近い。そのど真ん中で立ち尽くす後藤がようやく嶋田を振り返った。
「嶋田……お前は……その、なんだ…い、今、お付き合いしている女性はいるのか?」
「へっ!?」
これはまさか自分は告白でもされるのか。嶋田はまだ整わない息を止めて、返答する為の言葉を探す。確かに「俺、男だけど抱かれたい男ナンバー1」は先輩ですけど、それはちょっと盛ったというかなんというか、憧れの最上級表現であって、俺のタイプは背が小さいけど胸はでかい女の人です。なんて、言えるわけがない。
「今は…いませんが…それが……?」
ごくり、と唾を飲み込み小さく息を吐く。往来で向かい合う男の姿など、誰が望んでいるだろう。心なしかモジモジする後藤に小さな恐怖を覚え、思わず身構える。
「お前は女性に好かれるだろう?その、なんだ、綺麗な顔立ちをしているし、社内の女性ともよく話をしているから…」
「いやいや!そんなことないですよ!寧ろ先輩のほうがモテてて、そりゃもう老若男女問わず好かれてるじゃないですか」
告白される確率がどんどん上昇する雰囲気に、嶋田の血圧も上昇する勢いだ。一旦落ち着こう、静かに息を吐いて、鼻で吸う。口から吐いて、鼻から吸う。新人研修で習ったパニック防止の呼吸法だ。
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