告白

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幸い、通りが賑わっているおかげでこの呼吸法を密かに実施していることは後藤に気づかれていない。しかし、この異様な空気に気づいた通行人は何人かいたようで、向かい合うこの2人の男にちらりと目をやった。 「実はな……俺、す、好きな人ができて!」 嶋田はもう 呼吸法だけでは自分の動揺を抑えきれないでいた。俺も男だ。もう、どうにでもなろう。腹をくくれ。そう自分に言い聞かせ、ぎゅうっと瞼を閉じた後は落ちてくる爆弾に身を構えるだけだった。 「こういうことを言うと、お前に迷惑かと思ったんだが、俺は…その…女性に慣れていなくて。この気持ちをどうしていいか分からないんだ。でもこれは…この気持ちは…」 発射5秒前。遠くから女子高生達の笑い声が聞こえた。なんの話をしているのかは分からないが「ウケる」「キモい」という言葉ははっきりと嶋田の耳に届いた。確かに、今の自分の状況はウケるしキモい。 「嶋田、俺、多分恋をしたんだと思う」 「先輩!ごめんなさい!」 被害を最小限に抑えるために、間髪いれずにお断りの言葉で迎撃した嶋田は、急いで深く頭を下げた。彼のゆるふわアレンジのヘアスタイルはこの時崩れ去っていった。スタイリングには15分かかるのに、崩れるのには3秒で十分だったようだ。
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