捜索

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捜索

先輩、 俺は女が好きなんです。男らしくて格好良い先輩に憧れてはいました。あんなランキング作りましたが、正直本当に抱かれたいかと聞かれれば、抱かれたくありませんし抱けません!すみません!そう心の中で一気に告げる。嶋田の乱れた髪からは、オーシャンブルーのような香りと説明書きのあった整髪料の匂いがふわりと香った。 目の前でいきなり頭を下げて謝罪する後輩に、後藤も後藤で驚いていた。普段から卒なくなんでもこなし、人当たりの良い嶋田が珍しく取り乱しているのだ。どうやら自分は何か変なことを言ってしまったらしい、とようやく気づいた後藤は、全身から「すみません」と発する嶋田に頭をあげるよう言葉をかけた。 彼がゆっくりと頭を上げている間に、自分の過ちを探ると答えはすぐにでた。あ、と口元に手を当てたが、既に発射してしまった言葉はもう嶋田のほうに落ちてしまっていた。確かに、勘違いするはずだ。まるで俺が嶋田のことを好きみたいな文脈ではないか。ええぃ、なんたる失態。久しぶりに訪れた感情に舞い上がった己が情けない。そのまま手をうなじに当て、弁解すべき言葉を探した。 「いや、悪かった。違うんだ、その、勘違いさせてしまったな。お前に恋をしているわけではないから、まずそこは安心してくれ」 そう告げると、嶋田は「よかったぁーー」と深く息を吐いた。ひどく安堵した様子は、ひょっとして彼は自分のことが嫌いなのではないかと思わせるほどだ。まぁ、それはないと分かるのだが。自分を慕ってくれていることは日頃から十分に伝わっている。可愛い後輩のホッとした顔とボサボサの髪にふっと笑みをこぼし、後藤は話を続けた。 「好きな女性ができたんだ。だが、顔も名前も年齢も分からん」 後藤が一気にそう言うと「うそー!意味わかんない」と携帯を耳に当てて通話する女性がタイミング良く通りすぎて言った。
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