の、ような香り

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の、ような香り

初めて彼女に出会ったのは10日前。定時退社後いつものように駅に向かっていると、彼女は突然現れた。花のような、蜜のような、お香のようで果実のような、森のような、砂浜のような、そんな香りがして、無性に気になってしかたがない、居ても立っても居られない気持ちになった。後藤は「どんな香りなんですか、その人は」という嶋田の問いにそう答えた。 「それ以来、平日のこの時間、この場所を通ると必ずその香りに出会うんだ。でも、彼女を、見つけられない。なんというんだろうな、これは、運命の香りだと思うんだ」 「すみません。全く想像できません。その香り」 「なぜだ!こう、あるだろう?胸がざわめくような香りだ」 「俺、男ですよ?そんな抽象的なイメージの香りでピンとくると思いますか?」 「お前は女性が得意だろう!彼女取っ替え引っ替えで合コンとやらにも良く出向いて、人気者だと岡村が言っていたぞ!女性の香りとか分かりそうなもんだろう」 「なんですかその噂は!すごい遊び人みたいじゃないですか!違いますよ!二股と浮気だけは俺、絶対にしないので。真面目に遊んでます。そこは誤解しないでください」
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