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そして目玉は消えて
穴ぼこだけが残った
今度は穴ぼこからグーパンチが幾度も飛び出してきた
私は思わず「なんだこれは・・・」と声を出して言った
すると「おめえの、ちゃっこい頃だ」とじいちゃんの声がした
暮れにばあちゃんに「障子破いていいよ」って言われて破いてるときの私だ
田舎のじいちゃんが生きていた頃の私だ
隣にいた老人はいつのまにか
私の田舎のじいちゃんになっていた
「じいちゃん、どうしたの」と私が聞くと
「じいちゃんはな、お前のことが心配でよ 会いに来たんだど」
「寒くねえか 困ったことはねえかってな
いいか、しょーあんめいことは しょーあんめい どうにかなるもんだ」
「飯食ってか 食え、食え 腹いっぺい 食えよ」
じいちゃんは田んぼで日焼けした顔をしていた
じいちゃんは話を続けた
「おら、お前の辛かったことはな わかってる おら 何も聞かねえど
いいか しっかり 食え いっぺい食えよ」
「みんなな 顔で笑って心で泣いてるんだど 自分だけが辛いんじゃないんだど」
じいちゃんは なまりながら何度も私に話しかけていた
「じいちゃん、相変わらずなまってんな」と私は なまってじいちゃんに言った
「んだな おら なまってか?」とじいちゃんも なまって言った
じいちゃんと私は なまりを繰り返しては 笑い
涙をこぼしながら 笑い なまり続けた
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